部活動がすでに存在しない地域、新たな取り組みがはじまった地域。さまざまな課題を抱えるなか、この地域も部活動地域移行がはじまった。
いわゆるブロック部活という一学校単位の部活動でなく、数校合同で行うスタイルに切り替わった。そこで今回いくつかの指導現場を見て感じたことを書いておきたい。
部活動地域移行

この朝の風景は何年も前のものではなく、つい2日前に見た風景だ。その先を不安視する声が多い中にあって、現場で熱心に指導を行う指導者の姿に敬意を表する。
何十年もつづいてきた中学校の部活動。日本のスポーツ教育の原点であろう部活動は、献身的な指導者によって守られてきた。そのスポーツ教育の現場は、ほんのわずかな声により縮小され、そして解体がはじまった。
それぞれの声
働き方改革の言葉を発端に、部活動は見直しの対象となったと話した人がいる。若い指導者が部活動をやりたがらないと説明してくれた人もいる。
しかし、なぜなのか。
現場の指導者から部活動をやりたくないという声を聞いたことがない。これは本当のことだ。むしろ、子どもたちのために頑張りますとの声を聞かせてくれる指導者が多くいる。
子どもたちからは「楽しい」「友だちができて嬉しい」との声が聞こえてくる。そして、子どもの要求に応えるべく、朝早く遠方から送迎してくる保護者もいる。
是か否か

部活動地域移行について是否を問われれば、私は是の立場である。つまり、部活動地域移行に賛成している。なぜなら一学校単位の活動よりも、数校合同での活動の方が人数を確保できる可能性が高いから。しかも、合同での活動現場には新たな雰囲気も見てとれる。この雰囲気とは、先に紹介した子どもたちの声(ニーズ)に合致するのもだ。
しかし、だ。考えるべき重要なことが一つある。それは指導者の責任への対価である。
責任への対価
指導者が現場で抱える責任はとても重い。
気温を計測し、適切なタイミングで休息を与える。保護者への連絡や、緊急時の対応など、指導者の仕事はじつに多く責任が重い。
この日、グラウンドに何人いただろうか。サッカー、野球、そして体育館ではバレーボール。中庭から聞こえる合唱部の歌声は身体が震えるくらい心地がよい。これらの風景は私たちが経験した部活のそれと大きく違わない。だから指導者はこれくらいできて「当たり前」と、私たちは勘違いしがちである。
しかし、この当たり前は明らかに以前の水準とは違うことを知ってもらいたい。
活動には数多くのルールが設定され、より細やかな対応が求められている。名物監督がなんでも許されてきた時代とは大きく異なり、周囲の監視レベルは厳重だ。それなのに、それを守りつつも指導にあたる指導者への対価は思いのほか低い。
見直し
私たちが考える当たり前は、もう当たり前ではない。声にできない声は時間とともに鬱積し、いずれこの取り組みは破綻する。だから今すぐ見直すべきことは責任への対価である。早急に見直し、この活動を継続するための準備をすべきである。私はそう考える。
部活動地域移行はすでにはじまった。いい環境をつくろうと、指導者はみな努力している。子どもや保護者も先の不安を抱えながらも、活動に対する期待は大きい。だから子どもたちが集まってくるのだろう。部活動地域移行に対して、地域の人たちは前向きな反応を示している今だからこそ、この環境を守べく措置を早急にとるべきではないだろうか。